不動産投資におけるレバレッジ効果とは?|メリットや注意点を解説
目次
不動産投資に興味があり投資内容について調べていく中で「レバレッジ効果とはどういう意味だろうか?」と、疑問に感じている方は多いのではないでしょうか。
レバレッジ効果とは「てこの原理」を表す言葉であり、不動産投資においては「資金を借り入れて大きな利益を生み出すこと」を意味します。レバレッジ効果を上手く活用できれば「少ない自己資金でも不動産投資を始められる」「投資効率を向上できる」などのメリットが得られます。一方で、おさえておかなければならない注意点があります。
本記事では不動産投資におけるレバレッジ効果の意味やメリット、注意点を解説します。レバレッジ効果を活用するポイントについても紹介しますので、不動産投資に興味がある方はぜひ本記事を参考にしてみてください。
不動産投資におけるレバレッジ効果とは?
不動産投資におけるレバレッジ効果とは「資金を借り入れて大きな利益を生み出すこと」であり、具体的には金融機関からの融資を活用して自己資金以上の金額で不動産投資を行うことで得られる効果(利益率増など)を指します。
レバレッジを効かせる(金融機関からの融資を活用する)と自己資金以上の物件を購入できるため、収益の期待値が高まります。また、購入できる物件の選択肢も広がるため、良い条件の物件に出会える機会も増えます。
レバレッジを効かせる具体例
不動産投資におけるレバレッジの効果を正しく理解するために以下2つの具体例を用いて解説します。
- 自己資金のみの場合
- 自己資金 + 借入金の場合
レバレッジ効果への理解は不動産投資の利益率を向上するために大切であるため、参考にしてみてください。
①自己資金のみの場合
不動産投資を自己資金のみ(レバレッジを効かせない)で行う場合の具体例は以下の通りです。
【自己資金のみで不動産投資を行った場合】
- 物件:中古アパート
- 物件価格:1,000万円
- 自己資金:1,000万円
- 借入金:0円
- 利回り:10%
- 年間収益:100万円
上記の例では計算をわかりやすくするために購入時の諸費用などは含めていませんが、1,000万円の投資額に対して年間10%のリターン(100万円)を得られる結果となりました。
次に同じ自己資金でもレバレッジを効かせると、どのような投資シミュレーションになるのかを見てみましょう。
②自己資金 + 借入金の場合
不動産投資を「自己資金 + 借入金」で行い、レバレッジを効かせた場合の具体例は以下の通りです。
【自己資金に借入金を加えた場合(レバレッジを効かせた場合)】
- 物件:中古アパート
- 物件価格:5,000万円
- 自己資金:1,000万円
- 借入金:4,000万円
- 年利:5%(年間利息200万円)
- 利回り:10%(年間収益500万円)
- 実質年間収益:300万円(年間収益500万円 - 年間返済額200万円)
※計算を単純にするため、借入元金の減少やローン事務手数料は加味していません。
自己資金1,000万円で利回り10%の中古アパートを購入する場合、自己資金のみ(レバレッジを効かせない)の場合に比べて、実質年間収益が3倍になりました。
レバレッジを上手に活用すると自己資金を多く出せない方でも、投資効率が高められる可能性があります。
自己資金ごとの物件価格の目安
不動産投資を行う際には物件価格の10〜30%を自己資金として用意するのが一般的です。具体的な費用については以下の表を参考にしてください。
自己資金 | 不動産の価格帯 |
約100万円 | 300万円~1,000万円 |
約300万円 | 1,000万円~3,000万円 |
約500万円 | 1,600万円~5,000万円 |
約1,000万円 | 3,300万円~1億円 |
約2,000万円 | 6,600万円~2億円 |
約3,000万円 | 1億円~3億円 |
金融機関によっては物件価格満額のローン(フルローン)を組めるケースもありますが、融資条件は厳しくなります。また、フルローンを組むと月々の返済額が増えるため、キャッシュフローの悪化を懸念されます。
レバレッジを効かせて不動産投資を行うメリット
レバレッジを効かせて不動産投資を行うと以下のメリットが得られます。
- 投資効率が良くなる
- 不動産投資の開始を早めることで機会損失を防げる
- 団体信用生命保険に加入すれば万一のときも安心
レバレッジを効かせると得られるメリットを次の項目から紹介していきます。
投資効率が良くなる
レバレッジを効かせて不動産投資を行うと自己資金以上の物件を運用できるため、投資効率が向上します。
先述の具体例の通り、自己資金1,000万円で利回り10%の中古アパートを購入する場合でも、借入をすることでより価格の高い物件を購入できます。利回りが同じ物件であっても、レバレッジを効かせて価格が高い物件を運用できれば、より多くの収益をのぞめます。
不動産投資の開始を早めることで機会損失を防げる
レバレッジを効かせると不動産投資の開始時期が早められるため、機会損失を防げます。
自己資金が1,000万の状態で2,000万円の物件の不動産投資を行う場合、差額の1,000万が貯まるまで運用開始ができません。また、自己資金を貯めている間は投資を行えないため、収益は1円も発生しません。
レバレッジを効かせて投資開始時期を早めるのも一つの手段としておさえておきましょう。
団体信用生命保険に加入すれば万一のときも安心
ローンを組んで不動産を購入する際に団体信用生命保険(団信)に加入すると、万一のときも安心です。
団体信用生命保険とはローン返済中に債務者が死亡または高度障害になった際に、保険金が降り、ローンが全額弁済される制度です。
たとえば4000万円の物件購入と同時に団体信用生命保険に加入した債務者が亡くなった場合、保険金によって残りのローンが完済されるため、総額4,000万円の不動産を家族にのこせます。
団体信用生命保険への加入はローンを組む際の融資条件として設定されているケースが多く、死亡保険の代わりになります。
レバレッジを効かせる際の注意点
レバレッジを上手く利かせれば多くのメリットが得られますが、一方で以下の注意点についてもおさえておかなければなりません。
- 借入リスクがある
- 金利が上昇する可能性がある
- 逆レバレッジ効果に注意する必要がある
レバレッジを効かせて不動産投資を行う際の注意点を次の項目から詳しく紹介していきます。
借入リスクがある
レバレッジを効かせるには借入を行う必要があるため、借入リスクが発生します。
借入リスクとは家賃収入の有無に関わらず毎月ローンの返済義務が生じるリスクを指します。家賃収入がローン返済を上回っている状態であれば問題ありませんが、入居者の退去などによって空室が発生すると返済に困窮するおそれがあります。
とくにレバレッジを効かせているとローン返済額も増えるため借入リスクには注意が必要です。
金利が上昇する可能性がある
借入をした後に金利が上昇し、返済額が増えてしまう可能性に注意する必要があります。
ローンの金利は経済情勢によって変化します。インフレが起きた場合に変動金利を選択している場合は物価の上昇に合わせてローンの返済額も増えるおそれがあります。たとえば、金利1.5%で3,000万円の借入をしている場合の利息は「45万円/年」ですが、金利が3%に上昇すると年間の利息は「90万円/年」です。
金利は上昇する場合もあれば、下落する場合もあるため、将来の金利を予測するのは困難です。万が一金利が上昇した際に自分に支払えるだけの経済力があるかどうかを踏まえて、借入金額を調整し、変動金利か固定金利かを選択しましょう。
逆レバレッジ効果に注意|マイナスにも働く可能性がある
レバレッジを効かせた不動産投資は、逆レバレッジ効果に注意が必要です。
逆レバレッジ効果とは融資を受けて不動産投資を行った際に、利回りよりもローンの金利が高くなってしまう状態を指します。逆レバレッジの主な原因は空室や経済情勢の変化、経年劣化による家賃収入の減少などです。
不動産投資ではレバレッジを効かせることで自己資金以上の投資が可能になる一方で、借入金にかかる金利についても注意しなければなりません。不動産投資では規模に比例して損失が出る場合の金額も大きくなりがちです。
レバレッジを効かせて不動産投資を行う際には安定した運用を行うためにも、継続的に収益性が見込める物件を選び、長期的な視点で資金計画を立てる必要があります。
逆レバレッジ効果の具体例
逆レバレッジ効果の具体例は以下の通りです。
【逆レバレッジ効果が発生しているケース】
- 自己資金:1,000万円
- 借入額:3,000万円
- 返済期間:30年
- 利回り:2%(年間80万円)
- 金利:3%(年間90万円)
- 年間収益:-10万円(80万円 - 90万円)
レバレッジを効かせて投資効率の上昇を狙ったものの、逆レバレッジ効果によって年間で得られる家賃収入よりもローンの返済額が上回り、年間収益がマイナスになってしまうケースがあるため注意しましょう。
イールドギャップ|利回りと金利の差を意識しよう
不動産投資を行う際にはイールドギャップを意識しましょう。イールドギャップとは投資利回りと長期金利の差を指す言葉であり、大きいほどレバレッジ効果が高いと判断できます。
不動産投資には表面利回りと実質利回りの2つがあり、イールドギャップを算出する際に用いるのは実質利回りです。
表面利回り = 年間の家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
実質利回り = (年間の家賃収入 - 年間の諸経費) ÷ (物件価格 + 購入時諸経費) × 100
実質利回りは年間の諸経費である固定資産税や管理費、修繕積立金、購入時の仲介手数料や登録免許税など、さまざまな費用を含めて計算しているため、実際に不動産投資から得られる収益を具体的に計算できます。
イールドギャップはレバレッジ効果の大きさを示す指標として使えますが、一方で注意点があります。イールドギャップの注意点について次の項目から紹介します。
イールドギャップの注意点
効率の良い不動産投資を行うためにはイールドギャップが大きくなる不動産選びだけでなく、キャッシュフローも踏まえての判断が求められます。
イールドギャップはレバレッジ効果を測る指標になりますが、投資のキャッシュフローとは全くの別物です。
たとえば、同条件の物件を以下の借入条件で購入したとします。
A:借入3,000万円・返済期間30年・年利3%
B:借入3,000万円・返済期間10年・年利2%
Bのほうが借入金利が低いためイールドギャップは大きくなります。しかしローンの返済期間が短いため毎月多くの返済をしなければならず、賃収入が同じ場合にAよりもキャッシュフローが悪化します。
また、中古物件を購入する場合は大規模修繕工事の時期に注意しましょう。大規模修繕工事が発生すると多くの費用が生じるおそれがあり、キャッシュフローにも大きな影響を与えます。中古物件を購入する際は、大規模修繕工事をいつ実施するのか、支出の発生時期はいつなのかを確認しましょう。
新築物件は価格が高く利回りが低い傾向にあるため、ローンの金利によってはイールドギャップが低い物件があります。なお、築年数の経過によって入居率や家賃が下がり、イールドギャップがさらに下がり、逆レバレッジが発生するケースもあります。
不動産を購入する際にはイールドギャップだけでなくキャッシュフローなども踏まえて長期的な目線で判断しましょう。
レバレッジを効かせて不動産投資を成功させるポイント
レバレッジを効かせて不動産投資を成功させるポイントは以下の通りです。
- 融資審査には準備してのぞむ
- 実質利回りでシミュレーションを行う
- 中古不動産で不動産投資を行う
レバレッジ効果を最大限に発揮させるためにも各種ポイントをおさえておきましょう。
融資審査には準備してのぞむ
不動産投資で得られるレバレッジ効果を最大限に発揮するため、融資審査で見られる情報をあらかじめおさえてからのぞみましょう。
融資審査の内容は審査項目が開示されている訳ではなく、金融機関によっても異なりますが、主に以下の項目がチェックされているといわれています。
- 年収
- 年齢
- 勤務先
- 勤続年数
- ほかの借入状況
- 過去の金融事故
審査では返済比率(年収に占めるローン返済の割合)が主に見られているため、ほかのローンがある方は返済してからであれば融資を受けやすくなります。また、残債が減っている場合も融資の際に加味されます。
場合によっては、金融機関の担当者から投資についての考えを聞かれることもあるため、どのような計画を立てているのかなど、自信を持って答えられるようにしましょう。
実質利回りでシミュレーションを行う
不動産投資を行う前に可能な限り正確な収支予測を立てるためには、必ず実質利回りでシミュレーションをしましょう。
物件情報サイトなどに掲載されている利回りは表面利回りであるケースが多く、実質利回りとは異なります。表面利回りと実質利回りの違い(計算式)は以下の通りです。
表面利回り = 年間の家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
実質利回り = (年間の家賃収入 - 年間の諸経費) ÷ (物件価格 + 購入時諸経費) × 100
実質利回りには不動産投資で発生する諸経費や諸費用が加味されているのがポイントです。
表面利回りが数%あったとしても、固定資産税・都市計画税やマンションの管理費・ランニングコストといった支出を含めた実質利回りで計算すると、利回りがマイナスになるケースもあります。
不動産投資で損をしないために、必ず実質利回りでシミュレーションしましょう。
中古物件で不動産投資を行う
レバレッジを効かせた不動産投資は、イールドギャップが生まれやすい中古物件で行うのがおすすめです。
なぜなら、中古物件は新築物件よりも価格がおさえられており、利回りが高くなる傾向にあるためです。また、新築物件と比較すると、購入後に物件価値が下がりにくいため、長期的に安定した収益を得られるといえます。
一方、新築物件は築年数の経過による家賃の下落幅が大きいため、当初想定していたイールドギャップよりも小さくなり、場合によっては逆レバレッジが発生してしまう可能性もあります。
まとめ
不動産投資でレバレッジを効かせると効率的に収益を得られますが、一方で自己資金より多くの金額を投資に回す分、借入リスクや金利の上昇、逆レバレッジなどの注意点があります。
「収支の悪化や金利の上昇で月々のローン返済が困難になる」「家賃の下落によって当初見込んでいた収益と乖離する」といったリスクを踏まえたうえで不動産投資をしましょう。
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