アパート経営の初期費用はどのくらいかかる?必ず押さえたいポイントを解説
目次
アパート経営をはじめる際に、どれくらい初期費用がかかるのか気になっている方は多いかと思います。アパート経営に必要な資金の準備をスムーズに進めるためには、あらかじめ発生する費用を知っておく必要があります。
本記事ではアパート経営の初期費用や、運用中に必要な費用を解説していきます。初期費用をおさえる方法や、不動産投資を行うのに適した物件も紹介していきますので、アパート経営に興味がある方はぜひ本記事を参考にしてみてください。
アパート経営にかかる初期費用
アパート経営をはじめる際に発生する初期費用は主に以下の通りです。
- アパートの建築費用
- 不動産取得税
- 印紙税
- 登記費用
- ローンの事務手数料や保証料
- 火災保険料と地震保険料
- 仲介手数料
はじめに、アパート経営にかかる初期費用の詳細を解説します。アパート経営をするにはどの程度の初期費用がかかるのかおさえておきましょう。
アパートの建築費用
新築アパートでアパート経営をはじめる場合は建築費用がかかります。アパートの建築費用は規模や工法、建築する場所の法令によって異なりますが、おおむね以下の通りです。
木造アパート(2~3階建て) | 1坪当たり56万円~75万円程度 |
鉄骨造アパート(2~4階建て) | 1坪当たり83万円~110万円程度 |
≪参考≫ 政府統計の総合窓口(e-Stat):建築着工統計調査 住宅着工統計 2021年次 第34表
木造アパートは鉄骨造アパートと比較すると低コストで建築できます。一方で、法定耐用年数は木造アパートは22年、鉄骨造アパート(骨格材肉厚4mm以上)は34年であるため、鉄骨造アパートの方が資産価値を長期にわたって維持できます。
アパートの建築費用の総額は、以下のように坪単価と延べ床面積で計算できます。
建築費用 = 坪単価 × 延べ床面積
たとえば、延べ床面積が60坪のアパートの建築費用は以下のようになります。
木造アパート | 3,360万円~4,500万円程度 |
鉄骨造アパート | 4,980万円~6,600万円程度 |
建築費用は新築の物件でアパート経営をはじめる際の最大の初期費用であるため、必ずおさえておきましょう。
不動産取得税
不動産取得税は土地や建物を取得する際にかかる税金であり、以下の計算式で算出されます。
不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 税率3%
※令和6年4月1日以降の税率は4%
固定資産税評価額とは毎年1月1日時点での土地や建物の価格を指し、国が定めた固定資産評価基準に基づいて市町村が評価・決定します。固定資産税評価額は土地や建物の購入価格とは異なるため注意しましょう。
固定資産税評価額は土地の場合は時価の70%程度、建物の場合は50〜60%です。それぞれ時価より大幅に低く評価される点をおさえておきましょう。
たとえば5,000万円で土地を取得した場合、固定資産税評価額は3,500万円程度であり、課される不動産取得税はおよそ105万円です。
正確な固定資産税評価額を知りたい方は、市町村役場の固定資産課税台帳を閲覧すると確認できます。
不動産取得税には軽減措置があり、床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下のアパートを新築すると、最高1,200万円が建物の固定資産税評価額から控除されます。
不動産取得税は最寄りの都道府県税事務所に申告後に届く納税通知書をもとに支払いを行います。申告期限は地方自治体によってかわりますが、東京都の場合は「不動産を取得した日から30日以内」、大阪府の場合は「不動産を取得した日から20日以内」です。
印紙税
印紙税は経済取引の際に発行される領収書や契約書などの文書を作成した際に課される税金であり、不動産投資では売買契約書の作成時に納税が必要です。
印紙税の税額は契約金額によってかわり、以下の通りです。
契約金額 | 本則税額 | 軽減税額 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 | 5千円 |
1,000万円を超え、5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え、1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え、5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え、10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え、50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
現在、印紙税は軽減措置が実施されているため、令和6年(2024年)3月31日までは上記の表の軽減税額を支払います。
なお、軽減措置の対象は不動産売買契約書に記載された契約金額が10万円を超える場合に限られますが、アパート経営で超えないケースは非常に稀であるため、軽減税額が適用されると考えて良いでしょう。
登記費用
アパート経営をする際は土地・建物の登記費用として登録免許税を支払う必要があります。また、登記を司法書士に依頼する場合は別途費用が発生します。
アパートを新築する際には「表示登記」と「所有権保存登記」を行い、登録免許税は所有権保存登記をするときにかかります。また、中古で不動産を購入する際は所有権の移動を明確にするため、「所有権移転登記」を行う必要があり、登録免許税が発生します。
所有権保存登記をする際の登録免許税の税額は以下の計算式で算出します。
≪所有権保存登記≫
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%
不動産投資ローンなどの融資を受けてアパート経営をする際には抵当権設定登記が必要です。抵当権設定登記の費用の計算方法は以下の通りです。
≪抵当権設定登記≫
登録免許税 = 債権金額(融資を受けた金額) × 0.4%
中古不動産を購入した際に行う「所有権移転登記」の費用は「移転の目的」によってかわり、以下の通りです。
≪所有権移転登記≫
売買 | 登録免許税 = 固定資産税評価額 × 2% |
相続・法人合併・共有分割 | 登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4% |
贈与・遺贈・競売 | 登録免許税 = 固定資産税評価額 × 2% |
登記手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士に登記手続きを依頼する際には、司法書士手数料がかかります。
司法書士手数料は依頼する司法書士によって異なりますが、所有権保存登記と抵当権設定登記を合わせて6万円〜7万円程度が相場です。
融資事務手数料
アパート経営をする際に不動産投資ローンを利用する場合は事務手数料や保証料が初期費用としてかかります。
融資事務手数料は不動産投資ローンを組む際に金融機関に支払う事務手数料であり、定額制と定率制があります。定額制であれば相場は3万円〜6万円です。一方で定率制の場合は借入金額に対して一定の割合を融資事務手数料として支払うため、金額が多いほど高額になります。
火災保険料と地震保険料
アパート経営の災害リスクを軽減するために火災保険、地震保険に加入した場合は、それぞれの費用が発生します。
アパート経営をする際は火災や地震のリスクに備えて火災保険と地震保険への加入が望ましいです。また不動産投資ローンを組む際には火災保険への加入が義務づけられる場合があります。
地震保険は火災保険に付随する保険であり、地震による火事や建物の損壊などが補償されます。火災保険だけでは地震が原因の火災や建物の損壊は補償されないため、地震保険もあわせて加入するのが望ましいです。地震保険で補償される保険金額の上限は火災保険の50%までとなっており、建物は5,000万、家財は1,000万円までと決められております。
仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼してアパートを取得した場合は、売買契約成立時に仲介手数料の支払いが必要です。
仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法によって以下のように定められています。
取引価格(税抜) | 仲介手数料 |
200万円以下 | 5%以内の額+消費税 |
200万円~400万円以下 | 4%以内の額+消費税 |
400万円以上 | 3%以内の額+消費税 |
なお、不動産会社に仲介を依頼せず、売主から直接アパートを購入する場合(不動産会社が売主の場合も含む)は仲介手数料はかかりません。
アパートの運営にかかる費用
アパート経営の運用をする際は以下の費用がかかります。
- 不動産投資ローンの返済金(元本と利息)
- 管理委託手数料
- 修繕費
- 固定資産税・都市計画税
- 所得税や住民税
上記はアパート経営をする際の経費に該当し、家賃収入から差し引いた金額が利益になります。
不動産投資ローン返済
不動産投資ローンを利用してアパートを購入した場合は毎月返済金の支払いが必要です。不動産投資ローンの返済金はアパート運営でかかる費用で最も高額であり、借入金額と返済期間によって月々の返済額はかわります。
たとえば、3,000万円を借入期間が30年、金利が2%で不動産投資ローンで借入れた場合であれば、月々の返済額は約11万円です。
また、不動産投資ローンを利用する際に変動金利を選択している場合は金利が上昇する可能性があるため注意が必要です。毎月の支払いを一定額にしたい場合は固定金利を選択するのもひとつの手段です。
管理委託手数料
アパート運営をする際に物件の管理を不動産管理会社に委託する場合は管理費がかかります。管理を委託する方法はさまざまありますが、管理委託方式の場合は家賃収入の5%〜10%が相場です。
物件の管理をオーナー自身で行うと管理費はかかりませんが、入居者の募集や家賃の徴収、クレーム処理、共用部分の清掃などを行わなければならず、大変な手間と時間がかかります。管理費がかかっても、不動産管理会社に管理を委託するのがおすすめです。
管理委託方式以外に物件管理を任せられる方法として、サブリース契約があります。サブリース契約とは物件をサブリース会社が借り上げ、入居者に又貸しする契約であり、管理委託方式と同様に管理業務を任せられます。
サブリース契約は入居率に関わらず一定額の家賃保証を得られるメリットがありますが、管理費は家賃収入の10%〜20%であり、管理委託方式の約2倍の費用がかかります。また、家賃保証金額が値下がりする可能性もあるため、注意が必要です。
修繕費
アパートの運営をする際に、建物や設備が劣化した場合は修繕費がかかります。新築アパートであっても築年数が経過すると建物が傷んでくるため、定期的に修繕工事が必要になってきます。
修繕費は突発的に数万円~数十万円ほど必要になるケースが多いため、修繕積立金として予算を用意しておきましょう。修繕費のなかでも大規模修繕が発生すると、物件規模にもよりますが、数百万円単位の費用が発生します。10年に1回は大規模修繕が発生するとみて必ず備えておきましょう。
また、入居者が退去する際は原状回復工事をしなければならず、オーナーは費用の50~100%程度を負担しなければなりません。一般的に賃貸借契約は2年単位で更新されるため、2年に1度発生すると想定しておきましょう。
固定資産税・都市計画税
アパート所有者は毎年固定資産税がかかり、市街化区域内に土地・建物を所有している場合は都市計画税もかかります。
固定資産税と都市計画税は以下の計算式で算定できます。
≪固定資産税≫
固定資産税評価額 × 1.4%
≪都市計画税≫
固定資産税評価額 × 0.3%
※自治体によっては税率が0.3%より低い場合があります。
固定資産税と都市計画税はあわせて納付します。納付方法は毎年1年間の納付額を4分割あるいは一括で納付するか選べます。固定資産税と都市計画税は毎年かかるため、あらかじめ発生する費用をおさえておきましょう。
所得税や住民税
アパート経営で不動産所得が発生した場合、所得税と住民税を支払う必要があります。所得税と住民税は1年間の家賃収入から経費を差し引いた課税所得に対して課されます。
所得税の税率は5~45%であり、累進課税であるため課税所得が増えるほど税率は高くなります。住民税の税率は市民税が6%、都道府県民税が4%です。
所得税・住民税の金額をおさえるには経費計上できる項目を網羅し、課税所得を圧縮する必要があります。アパート経営で経費計上できる項目は決まっており、減価償却費や不動産取得税、登録免許税などが該当します。不動産投資ローンの返済金額からは利息のみが経費計上できます。
不動産投資が赤字であった場合は赤字金額をその他の所得(給与所得など)から差し引く(損益通算)ため、節税効果が得られます。減価償却費など経費計上できる費用をもれなく網羅して課税所得をおさえ、節税につなげましょう。
初期費用をおさえるポイント
アパート経営では大きな初期費用がかかりますが、以下の対策を講じると費用を低くおさえられます。
- 頭金を少なくする
- 不動産会社の物件を購入する
アパート経営の初期費用をおさえる方法を次の項目から紹介していきます。
頭金を少なくする
不動産投資ローンを利用する場合、頭金を少なくすれば自己資金からの初期費用をおさえられます。また、自己資金が少なく不動産投資をあきらめていた場合も、頭金を少なくすればアパート経営ができる可能性が広がります。
融資審査の際は優良物件かつオーナーの属性(勤務先や年収など)が良ければ、頭金なしのフルローンを組める場合があります。
ただし、頭金を少なくすると借入金(ローン)が大きくなるため、返済負担が重くなる点に注意が必要です。アパート経営をする際は収支シミュレーションが不可欠であり、無理のない返済ができるかを確認しておきましょう。
不動産会社の物件を購入する
アパート経営をする際に不動産会社が所有する物件を購入すると仲介手数料が発生しないため、初期費用を少なくできます。
不動産会社から物件を直接購入する場合は、売主は不動産会社になるため仲介手数料はかかりません。仲介手数料の金額だけ初期費用を安くできるため、アパート経営をする際は不動産会社が所有している物件を購入するのもひとつの手段です。
不動産投資ローンはレバレッジをかけられる
自己資金が少ない場合でも不動産投資ローンでレバレッジをかけて、自己資金の何倍もの資金でアパート経営ができます。
レバレッジとは「テコの原理」を指す言葉であり、不動産投資においては不動産投資ローンなどで資金を増やし、効率的に収入を得る方法として使われます。レバレッジを効かせると初期費用が少額で済むうえ、出資資金以上の価値を持つ物件を運用できるため利益を大きく上げられる可能性が高まります。
レバレッジを効かせるためには金融機関などの融資審査が肝心であるため、個人の属性(年収や職業、勤続年数など)が良くなければなりません。また、運用する物件の資産価値が長期的に維持できるかも審査の際に重視されるポイントです。
高額な物件でアパート経営ができるようになる一方で、レバレッジを効かせる場合はローン返済額が大きくなる点には注意しなければなりません。ローン返済額が増えてしまったにも関わらず家賃収入がさほどのぞめなかった場合は、レバレッジが裏目に出て損してしまう可能性があるため注意が必要です。
初期費用をおさえつつ、不動産投資を行うのに適した物件とは
初期費用をおさえつつ、不動産投資を行うには新築物件よりも中古物件の方がおすすめです。
中古物件は同規模の新築物件よりも取得費が安いため、初期費用をおさえられます。また、新築物件は資産価値の低下が激しいため、取得費が高額であるにも関わらず利回りが低くなりやすい傾向があります。
中古物件は入居率などのデータもあるため賃貸需要があるのかを事前に確認できる点も魅力です。賃貸需要が高い中古物件を選べれば、安定した家賃収入につながります。
アパート経営に適した中古物件を選ぶ場合は、東京圏や関西圏の中古物件が狙い目です。東京圏や関西圏の人口は増加傾向にあり、地方の物件と比べると高い賃貸需要と低い空室率が期待でき、アパート経営をするための好条件が揃っています。
アパート経営を行う際は東京都内の中古物件を用いるのがおすすめです。
まとめ
アパート経営をする際はアパートの建築費や税金、仲介手数料などさまざまな初期費用がかかります。初期費用をおさえるためには「ローンの頭金を少なくする」「不動産会社から購入し仲介手数料をおさえる」などの方法があります。
また、物件選びの際に中古物件を選ぶのも初期費用をおさえるポイントです。中古物件は同規模の新築物件より取得費が安いうえ、安定した利回りも期待できます。
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